【不動産登記・信託】信託の仮登記を伴わない「停止条件付所有権移転の仮登記」単独申請は認められる?(却下事由の解説)
家族信託や事業承継における不動産信託の実務において、「将来一定の条件が成就した際に効力を発生させたい」として、**停止条件付の信託契約**が締結されるケースがあります。
このような場面で「信託を登記原因とする停止条件付所有権移転の仮登記」を申請する際、**信託の仮登記を同時に申請しなかった場合、登記は受理されるのでしょうか?**
今回は、不動産登記法第98条1項(同時申請原則)および第25条5号(却下規定)の解釈と、現行信託法における仮登記実務のポイントを解説します。
1. 【結論】「信託の仮登記」を同時に申請しない場合は却下対象となる
結論から言うと、**「信託の仮登記」の申請を同時に行うことなく、「信託を登記原因とする停止条件付所有権移転の仮登記」のみを単独で申請した場合、その申請は法務局によって却下(不動産登記法第25条第5号)されます。**
根拠となる法令:不動産登記法第98条第1項
不動産登記法第98条1項では、「信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない」と規定されています。
この「同時申請」の原則は、登記の公示機能や正確性を担保するために置かれている規定です。本登記(本申請)だけでなく、**仮登記の手続きにおいても例外なく適用される**と解されています。
2. 停止条件付信託と仮登記が認められる理由(現行信託法4条)
そもそも「停止条件が付いた信託契約」に基づいて仮登記をすること自体は可能なのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
新旧信託法による取扱いの違い
・旧信託法時代(大正11年法):
「所有権が完全に移転しなければ信託自体の効力も生じない」と考えられていたため、停止条件付所有権移転仮登記や信託仮登記そのものを否定する見解が存在しました。
・現行信託法(平成18年法):
信託法第4条第1項および第4項により、契約締結によって効力が生じること、さらに「あらかじめ停止条件や始期を付した信託契約も有効に成立する」ことが明確化されました。
したがって、停止条件付の信託であっても、将来の権利移転に備えて**仮登記(所有権移転の仮登記 + 信託の仮登記)の双方を行うこと自体は認められています。**
3. 申請方式の不適合と「却下」の手続き
信託契約自体は有効であり、停止条件付所有権移転仮登記の要件を満たしているとしても、**「信託の仮登記」を伴わない申請**は方式違反となります。
不登法第25条第5号による却下
同時申請すべき「信託の仮登記」を欠いたまま所有権移転の仮登記のみを申請した場合、**「申請情報の提供の方法が法令の規定により定められた方式に適合しないとき」**に該当します。そのため、登記官は不動産登記法第25条第5号に基づき、当該申請を却下することになります。
「仮登記だから所有権側だけ先につけておき、信託の仮登記は後から入れればいい」ということは実務上認められませんので、必ず一括(同時)申請書類を作成する必要があります。
4. まとめ
- 現行信託法下では、停止条件付信託に基づく仮登記(所有権移転仮登記&信託仮登記)を行うこと自体は可能。
- ただし、不動産登記法第98条1項の規定に基づき、「所有権移転の仮登記」と「信託の仮登記」は必ず同時に申請しなければならない。
- 所有権移転の仮登記のみを単独申請した場合、方式不適合(不登法25条5号)として却下対象となる。
信託に関する登記実務では、本登記だけでなく仮登記の場面であっても「権利移転登記と信託登記の同時申請原則」が厳格に適用されます。複雑な条件が付された信託契約による登記申請の際は、申請書類の構成や同時申請の組合わせに十分な注意が必要です。
カテゴリー: 不動産登記 / 家族信託・民事信託
タグ: 信託登記 / 仮登記 / 停止条件付所有権移転 / 不動産登記法98条 / 同時申請 / 登記の却下




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