【不動産登記】異順位の共同相続人間で相続分譲渡後に遺産分割協議がされた場合の中間省略登記
数次相続が発生している複雑な案件で、**「異順位の相続人間で相続分譲渡が行われ、その後遺産分割協議が成立した場合」**に、中間登記(相続分譲渡の登記)を経ずに直接最終取得者へ名義変更できるかという論点があります。
今回は、この実務上の疑問に明確な解を出した**平成30年3月16日付け法務省民二第137号通達(解説:民事月報 Vol. 73.8)**のポイントを分かりやすく整理して解説します。
1. 結論:1件の申請で直接所有権移転登記が可能!
結論から申し上げますと、**相続分譲渡の登記を挟む必要はなく、また一次相続・二次相続を別々に申請する必要もありません。1件の申請で被相続人から最終取得者へ直接移転登記が可能です。**
【登記原因の記載例】
登記原因:「平成〇年〇月〇日(被相続人Aの死亡日)D相続、平成〇年〇月〇日(中間相続人Dの死亡日)相続」
権利者:最終取得者 E
2. 通達で扱われた具体的事例の図解
通達で示された事案の関係性は以下の通りです。
-
一次相続の開始:
被相続人Aが死亡。相続人は B、C、D(遺産分割協議は未了)。 -
二次相続の開始:
その後、相続人Dが死亡。Dの相続人は B、C、E、F(数次相続発生)。 -
相続分の譲渡:
同順位・異順位が混ざる中、B及びCが、E及びFに対してそれぞれの相続分を譲渡。 -
遺産分割協議の成立:
最終的に E・F間 で遺産分割協議を行い、Eが単独で不動産を取得することとされた。
3. なぜ「相続分譲渡」の登記を経ずに済むのか?(論点の整理)
本来、異順位の相続人間で相続分譲渡がされた場合、遺産分割が未了であれば「相続分譲渡による移転登記」を要するのが原則です(平成4年3月18日回答)。しかし、本件で直接登記が認められた背景には**2つの法的理由**があります。
理由①:遺産分割の遡及効(民法909条)
遺産分割が行われると、その効果は**「相続開始の時にさかのぼって」**生じます。協議の結果、Eが取得したということは、実体法上「最初から中間の所有者はD単独であった」ことになります。
したがって、遺産分割までの間に行われた途中の相続分譲渡を登記公示することは、**実体上存在しないはずの物権変動を登記することになってしまう**ため、譲渡登記は不要と解されます。
理由②:中間の「単独相続」への帰着(昭和30年甲第2670号回答)
数次相続において、中間の相続人が単独である(または遺産分割等によって結果的に単独相続となった)場合は、1件の申請で中間の単独相続を表して直接移転登記ができるルールがあります。
本件も遺産分割の結果、一次相続における中間者が「D単独」となるため、一次・二次を分ける必要がありません。
4. 実務上の注意点(中間の相続人が単独にならない場合)
本通達のスキームが適用できるのは、あくまで**「中間の相続人が結果的に1人(単独相続)に帰着する場合」**に限られる点に注意が必要です。
【注意:別個の登記が必要になるパターン】
例えば、遺産分割協議の結果、**CとEの2名がそれぞれ持分2分の1ずつ取得**することになった場合などは、中間者が単独にならないため、**一次相続と二次相続をそれぞれ別個に登記する必要**があります。
5. まとめ
相続分譲渡が絡む複雑な数次相続案件であっても、**「最終的に遺産分割協議が成立しており、かつ中間の相続人が1人に絞られる」**条件を満たしていれば、余計な中間登記を経ることなくスマートに1件で所有権移転登記を行うことができます。
実務で受託した際は、遺産分割協議の内容と中間取得者の状態をしっかり確認しましょう。




0 件のコメント:
コメントを投稿