【不動産登記・相続】条件付き「相続させる」旨の遺言と単独申請の可否(登研540号)
遺言書の中に「~した者に相続させる」といった停止条件が付けられている場合、どのような条件成就の立証資料が必要になり、誰が登記申請できるのでしょうか?
今回は、実務で非常に参考になる登記研究(登研540号)の質疑応答をベースに、条件付き「相続させる」旨の遺言による所有権移転登記の手続きについて分かりやすく解説します。
1. 今回扱う要旨・質疑応答(登研540号)
まずは、今回対象となる質疑応答の内容を整理します。
■ 事例の内容:
遺言書に「法定相続人(A・B・C・D)のうち、被相続人の配偶者と同居した者に相続させる」という旨の記載がある。
■ 実際の状況:
相続人Aが被相続人の配偶者と同居した。
■ 論点:
- 相続人Aは単独で相続を原因とする所有権移転登記を申請できるか?
- 申請できる場合、どのような立証資料(添付情報)が必要になるか?
2. 結論とポイント
【結論】
相続人Aは、本件遺言書に基づき単独で相続による所有権移転登記を申請することができます。
ただし、自身が「配偶者と同居していた」という条件成就を証明するため、他の共同相続人(B・C・D)全員による「同居に関する証明書(印鑑証明書付き)」を添付する必要があります。
3. 実務上の解説・注意点
(1)なぜ「単独申請」ができるのか?
「特定の相続人に相続させる」旨の遺言(いわゆる特定の財産を特定の相続人に承継させる旨の遺言)がある場合、原則として指定された相続人は単独で登記申請が可能です。
停止条件(「配偶者と同居したこと」)が付されている場合であっても、その条件が成就したことが立証できれば、単独申請できるという扱いは変わりません。
(2)条件成就の証明(立証資料)のハードル
ここで最大のポイントとなるのが、「条件が成就したこと(=Aが配偶者と同居したこと)をどうやって法務局(登記官)に証明するか」という点です。
住民票上の住所が同一であること等だけでは、必ずしも実態としての「同居」を客観的に証明しきれない場合があるため、登研540号では以下の書類を要求しています。
必要書類:
- 遺言書
- 他の共同相続人全員(B・C・D)が作成した「Aが配偶者と同居していたこと」を認める証明書
- 上記証明書に押印した印鑑証明書(B・C・Dのもの)
つまり、単独申請という手続形態自体は可能であるものの、結局のところ「他の相続人全員の協力(印鑑証明書付きの証明書)」が必要になるという点に実務上の注意が必要です。
4. まとめ・実務への応用
- 「相続させる」遺言+停止条件でも、条件成就を立証できれば指定相続人からの単独申請が可能。
- 条件成就の立証には、他の共同相続人全員の印鑑証明書付き証明書が原則として必要。
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遺言作成時の注意点:
遺言を作成する段階でこのような不確定な条件を付けると、のちの相続登記で他の相続人の協力が得られず、登記が難航するおそれがあります。
遺言作成実務においては、できるだけ条件内容を明確にするか、不確定な条件付遺言を避ける工夫(遺言執行者の指定や客観的に証明可能な条件設定など)を検討することが望ましいでしょう。




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