(6)完全親子会社間の不動産売買:承認議事録は省略できる?必要書面と実務の要点

2026年8月9日日曜日

不動産登記

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完全親子会社(100%子会社)の間で不動産を売買する場合、役員の兼任状態によっては、一見「利益相反取引」の形式を備えてしまうことがあります。

この場合、所有権移転登記の申請にあたって、「承認議事録(株主総会や取締役会)」の添付を省略することはできるのでしょうか?

結論から言うと、適切な証明書面を提供することで、承認議事録の添付を省略可能です。

今回は、その判断根拠と実務で提示すべき具体的書面について、分かりやすく解説します。

1. 事例の設定(取締役の兼任関係)

以下のような取締役構成を持つ会社間で、不動産の所有権移転登記を行うケースを想定します。

  • 完全親会社:代表取締役A、取締役B、取締役C、取締役D、取締役E
  • 完全子会社:代表取締役B、取締役F、取締役G

この構成では、両会社で「取締役B」が共通して役員を務めています。

そのため外形上は、会社法上の利益相反取引(兼任役員による直接・間接取引)に該当するように見えます。

2. 実体法上の結論:なぜ承認が不要なのか?

会社法(356条1項2号・365条)では、取締役が自己または第三者のために会社と取引を行う際、利益相反を防止するために株主総会や取締役会の承認を求めています。

しかし、親会社が子会社の株式を100%所有している「完全親子会社間」の取引では、実質的な利益相反関係が存在しません。

そのため最高裁判例や通説的見解においても、このようなケースでは実体法上、株主総会や取締役会の承認手続自体が不要と解されています。

3. 登記実務での取扱い:必要となる書面のポイント

実体法上は承認が不要であっても、登記手続きの外形上は利益相反に見えてしまうため、そのままであれば承認議事録の添付を求められてしまいます。

そこで登記実務では、「実質的に完全親子会社関係にあること(=実質的利益相反がないこと)」を証明する書面を添付することで、取締役会議事録等の提供を省略できるとされています。

添付すべき「完全親子会社関係を証する書面」の具体例

売買取引の時点で、実質的に100%親子会社関係にあったことを裏付けるため、以下の書面などを提供します。

  1. 完全親会社の代表取締役が作成した証明書
    「取引時点で相手方が自社の完全子会社であった」旨を証する書面(代表取締役Aの印鑑証明書付き)。
  2. 完全子会社の株主名簿の証明書 + 登記事項証明書
    取引時点における子会社の株主名簿に対し、兼任役員(B)以外の取締役全員(FおよびG)が証明した書面(各印鑑証明書付き)と、取引時点の全発行済株式数が確認できる登記事項証明書。

【注意点】申請時のポイント

単なる形式的な株主名簿の記載だけでなく、「取引時点」において実体的に100%の所有関係があったことを証することが必須となります。

取引日と証明対象のタイミングがズレてしまわないよう、注意して書類を準備する必要があります。

まとめ:実務でのチェックリスト

  • 基本の考え方:完全親子会社間の取引は実質的に利益相反がないため、承認議事録の添付は免除され得る。
  • 代替書面:「100%親子関係であることを証する書面」を立証資料として登記官へ提示する。
  • 書類構成:親会社代表者の証明書、子会社役員(兼任者除く)による株主名簿の証明書、登記事項証明書等を準備する。

※本記事は一般的な実務上の取り扱い事例に基づいて解説したものです。個別案件における立証資料の範囲や手続にあたっては、事前に管轄法務局や関係先にご確認ください。





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