被相続人が共有していた共同住宅の一室に配偶者が居住していた場合、その配偶者に「配偶者居住権」を設定できるのか、またその効力はどこまで及ぶのかは、実務上非常に重要な論点です。
今回は、非区分の共同住宅における配偶者居住権の可否・効力範囲・課税価格の取扱いについて、法務局の実務取扱いをもとに分かりやすく解説します。
結論から言うと、配偶者居住権の設定申請は可能であり、その効力は「建物全体」に及びます。
1. 具体的な事例(事案の概要)
【事案の概要】
・被相続人Aと配偶者Bは、それぞれ持分2分の1で共有していた「非区分の共同住宅の一室」に居住していた。
・Aの死亡後、遺産分割協議によりAの持分は子Cが相続した。
・あわせて、配偶者Bのために当該建物に「配偶者居住権」を設定することが取り決められた。
【実務上の論点】
この配偶者居住権設定の登記申請は受理されるか?また、効力が及ぶ範囲は「建物全体」か、それとも居住していた「一室(居住部分)のみ」か?
2. 実務上の結論
配偶者居住権設定の申請を受理することができるケースであり、その効力は「建物全体」に及ぶものと取り扱われます。
3. 法律上の根拠と解説
① 配偶者居住権の成立要件(民法1028条1項)
配偶者居住権は、遺産分割や遺贈によって取得するものとされたときに成立し、相続開始時に居住していた建物の「全部」について無償で使用・収益する権利です。
② 共有建物における配偶者居住権(民法1028条2項)
居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合でも、「他の者が持分を有するとき」は配偶者居住権は消滅しないと定められています。
つまり、民法は配偶者と第三者(この場合は子C)との「共有」を前提とした配偶者居住権の成立を明確に認めています。
③ 建物の一部にしか住んでいなかった場合
配偶者が相続開始時に居住していたのが該当建物の一部(共同住宅の一室など)であった場合であっても、その効力は「建物全体」に及ぶとされています(令和2年3月30日法務省民二第324号通達)。
④ 登録免許税の課税価格に関する注意点
登記申請における課税価格の計算にも重要な注意点があります。
配偶者居住権が「建物全体」に効力を及ぼす性質上、共有者の持分割合には左右されず、「対象の建物全体の価格」により計算することになります。持分割合で按分した価格ではない点に注意が必要です。
まとめ
非区分の共同住宅(アパートやマンション一棟など)の一室に夫婦で住んでいた場合でも、遺産分割によって配偶者居住権を設定することは可能です。
そしてその効力および登記申請時の課税価格は、一室のみではなく**「建物全体」**を基準として取り扱う点、実務上しっかり押さえておきましょう。




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